マックスコーヒー飲んでますか!?
コカ・コーラから北関東を中心に発売されているマックスコーヒー。甘みの強い練乳入りのコーヒーと、黄色と茶色で構成された可愛らしいパッケージが特徴的です。本記事では、そんな特色あるマックスコーヒーのデザインに着目し、マッ缶ことマックスコーヒー缶のパッケージの装飾を調べました。
データ集め
Adobe Illustrator を用いて缶のデザインのトレースを試みます。トレースに先立って、缶の図柄に関するデータを正確に取得する必要がありますが、筒状の缶は通常のプリンタではスキャンすることはできません。 今回は、代替として以下のデータを参考にします。
- マックスコーヒーの 500ml ペットボトルのフィルムを剥がし 600 dpi でスキャンしたデータ(図 1、図 2):フィルムに若干の歪みがあり怪しい点も存在するが、少なくともインターネット上のデータよりは緻密なデータが得られそう。
- マッ缶を望遠レンズで撮影したデータ:遠距離から望遠で撮影することで幾分か歪みが緩和される。
缶のサイズを計測したところ高さ 125 mm、Φ51 mm、円周が 168 mm でした。これらのデータを基にトレースしたデータを図 3 に示します。
ロゴ
正面と背面の 2 箇所に「MAX COFFEE」のロゴ(図 4)が印刷されています。恐らくオリジナルのロゴと推測されますが、書体の分類としてはサンセリフ体に該当し、Gotham 等に通ずる幾何学的なデザインです。正面のロゴのサイズを計測したところ、50 mm × 26.7 mm でした。
全体に目を向けると、「MAX」の天地(上下)が完全に揃っているのに対し、「COFFEE」の部分では C、O が上下のラインから僅かに飛び出すような形で配置されています。水平方向では、C のカーブが M の左端よりも出っ張っていますが、右側はおおよそ垂直で揃えられています。
In depth
MAX の文字をより詳しく見てみます(図 5)。一般に、書体は視差調節を重視して設計されることが多いため、本ロゴにもそのような調整が加えられているのかが気になるところです。
- M:単純な直線のみで構成されており、目立った視差調節は見受けられない。完全な左右対称。
- A:下側のベースラインからカウンタに掛けて僅かにストロークが細まっている。右側のステムは左側に比べて明らかに傾斜が大きい。
- X:左下から右下へ向かう(\向きの)ストロークが若干右側にずれている。その他にも微妙な錯視調整を感じたが、これが意図した設計であるかは不明。
続いて COFFEE の部分を眺めます。
- C:円よりも中央部分に膨らみを持つ。下部に重心が置かれており、カーブも僅かに長い。終端部は垂直。
- O:上下左右対称。やや横長で、比率は内側のパスで 16:15、外側のパスは 100:99。C と同様に中央部分が膨らんでおり、特に内側のパスの膨らみが強い。Illustrator で内側 -13 %、外側 -4 % 程度の「膨張」効果を掛けた円に近似する。
- F:完全な直線だが、縦画と横画の比率は 6:5 と異なる。アーム(上の横画)とバー(中央の横画)の長さが等しい。
- E:ストロークの太さは F と同一。バー < 上側のアーム < 下側のアームの順に長さが短い。
なおインターネット上の画像と手元の実物を比較すると、現在発売されている缶・ペットボトル双方のパッケージにおいて、旧来よりもカーニングが広めに取られていることが判明しました。現行のものは FFEE に比べて CO の字間がやや狭く、逆に「OF」は空きすぎなようにも思えます。
謎の曲線? 波線
ロゴ横に長さ 95.5 mm の波線(図 6)が 4 箇所あしらわれ、1 本の波線に対して周期が 3 回(背面は 3 回、縮尺も異なる)ずつ存在します。サイン波のような風貌ですがサイン波ではなく、線幅も一定ではありません。1 箇所につき、外側、中央、内側と 3 つの曲線が存在しますが、これらの形状はすべて異なります。さらには、1 つの山に対して左右対称ですらない、という謎な曲線です。
正面
正面には「MAX COFFEE」「GEOGIA」ロゴのほかに「練乳入り」「マックスコーヒー」「コーヒー飲料」と 3 つの文字が記載され、左右に 38 mm の間隔で先述した波線が並びます。パッケージ全体で使用書体はモリサワの「新ゴ」ファミリーに統一されていて、「練乳入り」「コーヒー飲料」の部分はそれぞれ 新ゴ B、新ゴ M です。「練乳入り」の部分はベタ組みにトラッキングを -20 程度掛けてあり、カーニングは詰められていません。「1 本あたり 120 kcal」は和文が新ゴ、欧文は Helvetica Condensed で、天地を揃えるべく和文が級下げされています。テキストの囲み罫は矩形と楕円を組み合わせたデザインです。
マックスコーヒー
「マックスコーヒー」の文字(図 7)は 31.5 mm × 5 mm の赤い矩形で囲われており、下部から 21.7 mm の位置に配置されています。書体は新ゴ B の 16 Q で、適切にカーニングが詰められているほか、「コーヒー」の長音の部分を 70% 程度の長体にする等、文字組みに工夫が凝らされています。
側面
側面には、注意表記、バーコード(JAN コード)、「リサイクルしてね」のロゴ等が縦方向に並んでおり、狭いスペースながらに大量の情報が詰め込まれています。注意書きは最終行まで両端揃えの所謂「カンパコ組み」で、約物は行中・行末に関わらず半角です。全体的に長体気味ですが、項目ごとに本文よりも小さなサイズで付された ● のマーカーは正体に見えます。注意事項の背後のザブトンは角が若干丸まっています。
「リサイクルしてね」(図 8) は タイプバンク(旧リョービ)の G2 サンセリフ-B をベースとしたロゴタイプで、コカ・コーラ社で共通のシンボルが使用されています。「リサイクル」の部分は微調整が加えられ、元のフォントと若干エレメントが異なるほか、全体的に少し太めに強調されて見えます[1]。その他の部分に関しては元のフォントと同一の形状です。 また、「あき缶はリサイクル」の部分は UD 新ゴが採用されています。パッケージの他箇所が通常の新ゴであることに鑑みると、この部分も他飲料と共通である可能性が高いです。
成分表示
複数の書体サイズが混在しています(図 9)。「0120-308509」の電話番号は隣の「お客様相談室」よりも級上げされ、書体も太めのウェイトが採用されています(図 10)。市外局番を区切るハイフンもベースラインシフトによって天地中央に揃えられるなど、細部まで拘った調整が伺えます。その下の 「GEOGIA」のみ Helvetica が使用されています。
成分表示上のロゴ、「練乳入り」「マックスコーヒー」の文言は正面のものとはサイズが異なり、やや縮小されて掲載されています。
色
以下の 4 色が使用されています。文字周囲に僅かなヌケ(白い隙間)が見られることから、オーバープリント処理[2]はされていないようです。特色が使用されている可能性もあります。
色 | 詳細 |
---|---|
黒 | 「MAX COFFEE」「GEOGIA」のロゴ、「練乳入り」「コーヒー飲料」の文字、バーコードの文字色。恐らく K100。 |
黄 | マックスコーヒーといえばの背景色。C35, Y100 程度。 |
赤 | 「マックスコーヒー」「軽く振り、少し待ってから、あけてください」のザブトン。 |
茶 | 波線や成分表示部分の背景色。 |
白 | 実は意外に少ない。バーコードの背景色と背後の「ほっとする甘みがお楽しみいただける……」の文言のみ。 |
むすびにかえて
いかがでしたか!? 調べてみると、マックスコーヒーのパッケージには様々な工夫が凝らされており、北関東のソウルフードとして愛されてきた所以が判明しました! 今後もマックスコーヒー(図 11)から目が離せません!!!
本記事は独自研究に基づくものであり、コカ・コーラ社および株式会社鈴木コーヒーとは一切関係ありません。